主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の授業とは
                               加藤 明
 学校の教育課程の基準を定める学習指導要領の改訂により、これからの授業では、「主体的・対話的で深い学び」をめざして学習が進められる。主体的とは「自分ごと」として課題に取り組むことであり、対話的とは「ことばを媒介にしたコミュニケーションと知的なコラボレーション」によって学習を進めること、深い学びとは「実感や納得、感動等を伴っての知的な深い学びや、人間性の涵養の深い学び」のことである。
 例えば、小中一貫校で参観した次の授業が、お手本の一つである。中学1年美術科、風景を描いて3時間目である。チャイムが鳴り、黒板にピックアップした5枚の絵の鑑賞から授業が始まった。「この絵はAさんの絵だけれど、みんなの絵とどこが違うかな。」いろいろな意見を受け止めた後、「空の色はどうかな」とたずねられた。「きれいな青、あの日の空の色だね」の意見に続いて、「そう、抜けるような青い空だったね。どのように混ぜたらこんな青色が作れるかな」と相談、発表をさせた後、Aさんにこの青色の作り方を教えてもらって作ったのである。「せっかくだから、色を塗るときは、気に入った色になるまで工夫しないともったいないよ」と教えられ、5枚の絵のそれぞれについて同じように鑑賞した後、いよいよ絵の制作の時間になった。さっそく続きに取りかかる生徒もいれば、ピックアップされた生徒のところに行って続きの話に弾んでいる生徒もいた。毎回のこのような鑑賞により、どこに目を付けて友だちの絵を見れば学ぶところが見えてくるかといった鑑賞の見方、考え方が育つだけでなく、それをすぐに自分に取り入れて共に高まり合う手応えを味わわせることによって協働することのよさ、そして相手への尊敬、さらに自分のよさの確認から自己肯定感をもつことにもつながるものである。このように「話す」「聞く」によることばのキャッチボールによる高まり合いを始めとして、「読む」ことによる本や作者との対話、「描く」「書く」ことによる考えのまとめや表出、振り返りによる自分との対話等によって深い学びへ導く方法である。そのためには、どこに目を付ければこれまで見えなかった世界が見えてくるかについてポイントを把握し、講義型で一方的に教え込むのではなく、生徒の発表や討論、相談といったアクティブな学習活動を奨励するなかで、考えさせながら教え、教えながら考えさせる。つまり講義型とアクティブ・ラーニング型のハイブリッドな展開が求められるのである。台形の面積の公式を学んだら、これまでの平行四辺形や三角形の面積の公式と関連付け、いつでも問題解決に使えるよう統合化しておく。このようなAIに負けない不断の認識の再構造化が、これからの知的な深い学びである。

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